プライマリケアとは耳慣れない言葉かもしれませんが、簡単に言うと"身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療"という意味です。何でも診てくれるというと少し胡散臭く聞こえるかもしれませんが、例えば、「風邪を引いた」とか、「ぎっくり腰になったので痛み止めが欲しい」、「じんま疹が出た」とかで、もちろん始めからそれぞれの専門医の診察をうけてもよいのですが、「行ったことがないのでおっくうだな」と思う人もいらっしゃると思います。そういう人に対応できるのが"プライマリケア医"です。当然、放置できない"かぜ" "腰痛" "じんま疹"もありますので、専門的治療が必要と判断されたら直ちに専門医あるいは総合病院などに紹介することになります。
また、例えば女性の腹痛の場合、それが婦人科の病気なのか、胃腸炎や虫垂炎など消化器の病気なのか、尿管結石や膀胱炎などの泌尿器科の病気なのかはっきりしない場合があります。このとき非常に重要なのがエコー検査です。
一部しか見られない医者の場合、「これは私の専門ではない病気だから他に行ってください。」と言うでしょう。でも患者さんからすれば、「だったらどこに行けばいいの?」ということになります。少なくともエコー検査で痛いところがどの臓器なのかは大体分かりますので、例えば婦人科の病気で緊急を要する場合はこの病院を、あるいは消化器の病気で緊急性がない場合は短期間投薬の後にしかるべき消化器内科の診療所を紹介するというように、患者さんが泌尿器科の病気でないからといってそこで終わるのではなく、さらに医師として患者さんに助言できるプライマリケア医を目指しています。
私が医者になった頃は、"専門医花形時代"と言ってもいい時代でしたが、逆に私も含めてあまりに他の科の病気を知らなさすぎる医者が多い様に感じていました。特に在宅医療の現場では、“専門科”は関係ありません。